恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~
新宿駅東口にたどり着いた花澄は、電光掲示板の前できょろきょろと辺りを見回した。
花澄はいつも、八王子にあるアパートから中央線で新宿まで通っている。
渋谷というと、やはり山手線が手っ取り早いだろうか。
と改札の方に足を向けた、そのとき。
「……あの、すみません。ちょっといいですか?」
横から声を掛けられ、花澄は足を止めた。
見ると。
スーツ姿の30代とおぼしき男性が、にこやかな笑みを浮かべて近づいてくる。
男性は手にしていた鞄の中から名刺のようなものを取り出すと、花澄に差し出した。
差し出されたそれを手にした花澄だったが。
「……っ!」
花澄はそれを見、うっと息を飲んだ。
『club Chroulis 六本木
フロアレディ募集!!
時給5000円以上確約!! 』
どうやら、キャバクラのバイトの募集らしい。
こういうキャッチは都知事のローラー作戦のあと下火になったと思っていたのだが、やはり手口を変えてまだ存在しているらしい。