恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~
翌日の土曜。
12:00。
花澄は新宿駅西口改札で暁生を待っていた。
この間はスーツだったが、今日は大人の女性らしい落ち着いた濃紺のワンピースに真珠を象ったネックレス、カシミア混のコートを身に着けてみた。
……手持ちの服の中で、最も上品に見えるものをセレクトしてみたつもりだが……。
やがて人波の向こうから暁生が姿を現した。
シャープなシルエットの黒いトレンチコートの下に、グレーのシャドーチェックのスーツ、そして茶系のネクタイを合わせたその姿は、思わず目を奪われてしまう格好良さだ。
暁生は花澄の姿を見つけると、速足で歩み寄ってきた。
「お待たせしてすみません、花澄さん」
「いえ、私も今来たばかりですから……」
「実は午前中に台場の方に行ってまして。本当はもう少し早く着く予定だったのですが……」
「台場、ですか?」
首を傾げた花澄に、暁生は軽く頷いた。