恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~
「ええ。年明けから、ビックサイトで中国企業の産業展兼商談会がありまして。私の会社も出展するものですから、その準備をちょうど今、行っているところなのです」
「……暁生さんの会社は、どういった事業をしてらっしゃるのですか?」
「メインは不動産ですが、今は建築やITなど、幅広い事業を手掛けております。特に今、力を入れているのは水事業ですね」
「水、ですか?」
花澄は意外な言葉に驚き、暁生を見た。
暁生は少し笑い、花澄を見る。
「……ここで話すのは寒いので、店に入りましょうか? 近くに美味しいスペイン料理の店があるのですよ」
暁生は言い、慣れた様子でそっと花澄の肩に腕を回した。
そのまま優しくエスコートし、出口の方へと向かう。
ふわりと漂う甘くスパイシーな香りに、花澄は思わずドキッとした。
────やはり、手慣れている。
しかし、その感触になぜか懐かしさを感じるのは、気のせいだろうか……。
花澄は暁生にエスコートされながら、繁華街の方へと歩いていった。