恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~



暁生は一旦言葉を止め、花澄を見た。

……真っ直ぐ心に入り込む、その眼差し。

首を振った花澄に、暁生はひと口水を飲み、続ける。


「水、特に淡水を制するものは、土地を制す。……土地を制すには、まず水を制するところから始まります」

「なるほど……」

「ここ数年、中国企業が東北や北海道の水源を買い漁っているのもそのためです。日本では蛇口を捻れば普通に淡水が出てきますが、世界的に見れば、淡水は貴重なのです」


暁生の言葉に、花澄はへぇと頷いた。

暁生は女慣れしているが、どうやら仕事に対する姿勢は真面目なようだ。

感心する花澄に、暁生は前菜の茸のアヒージョを綺麗なナイフ捌きで切りながら言う。


「もっとも……、中国人が水を重視するのは、土地があってのことなんですけれどね」

「それは、どういう……?」

「端的に言うと、中国人の真の目的は土地だということです」


暁生は言い、フォークを止めて花澄を見た。

訝しげな顔をする花澄に少し笑い、続ける。


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