恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~
「女性相手に、こんなに固い話をしたのは初めてですよ? やはりあなたは、他の女性とは一味違いますね」
「え、そんなことは……」
「勉強熱心なあなたに、一応渡しておきましょうか。来週からビックサイトで行われる、展示会の入場券です」
暁生は言い、スーツの胸元からすっと名刺入れを出した。
その中から何やら黄色い券を取り出し、花澄に差し出す。
「繊維系の企業やファブリックなどの会社も出展してますから、興味があればぜひお越しください」
「……ありがとうございます」
花澄は貰ったチケットをまじまじと見た。
繊維系の企業と言われてもいまいちピンとこないが、工房を経営する上で何か参考になるものがあるかもしれない。
年が明けたら、有休をとって行ってみようか……。
「あぁ、もし実際に商談をする際は、私に一言声をかけてください。開催期間中は基本的に現場にいる予定ですので」
「……わかりました」
「ではもう少し、柔らかい話に移りましょうか。……花澄さんは、ドライブはお好きですか?」
暁生はにこりと笑って言う。
────吸い込まれそうな、その笑顔。
思わずドキッとした花澄に、暁生は続ける。