恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~



「もしよろしければ、来週の土曜、湘南の方に行ってみませんか? この時期、湘南の海はとても綺麗に見えると思いますよ?」


暁生の言葉に、花澄はうーんと首を捻った。

来週の土曜というと、年が明けて最初の土曜日だ。

……確かその日は同窓会だったような気がする。

花澄はバッグの中で携帯を開き、スケジュールを確認した。

やはり、来週の土曜は同窓会だ。

……なぜ暁生が冬の湘南の海を知っているのか……。

同窓会に気を取られた花澄はそのことに気付かぬまま、暁生を見た。


「すみません。来週は高校の時の同窓会があるので……」

「同窓会、ですか?」

「ええ。2年ぶりなので、友人と一緒に出る予定なんです」


と、花澄が言うと。

暁生の眼鏡の奥の瞳が一瞬、鋭く光った。

首を傾げた花澄に、暁生は言う。



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