恋獄 ~ 白き背徳の鎖 ~
一章
1.偶然の再会
12月下旬の3連休の最終日。
クリスマスのイルミネーションが夜の銀座を鮮やかに彩る中……。
花澄は急ぎ足で数寄屋橋の交差点を抜け、日比谷の方面へと歩いていた。
イブの夜を迎え、銀座の街はいつにもまして人通りが多く、行き交うカップル達でどこも混雑している。
『ペニンシュラのロビーで、19:00に待ち合わせにしよう』
と恋人の広瀬直行に言われたのは、一週間前。
クリスマスイブにふさわしい、ちょっとリッチなディナーをプレゼントするよと直行に言われ、花澄は今日、手持ちの服の中で一番上品に見える服を選んでみた。
濃紺のワンピースに真珠のイミテーションのネックレス、アンゴラ混の黒いコート。
全身で2万弱という安い格好だが、ドレスコードに引っかかることはないだろう。
花澄は有楽町のガード下を抜け、日比谷の交差点の角にそびえ立つ『ホテル・ペニンシュラ東京』のエントランスへと入っていった。