恋獄 ~ 白き背徳の鎖 ~
花澄は俯き、脇に置いたバッグをちらりと見た。
バッグのサイドポケットには、根付のぬいぐるみがついたアパートの鍵が入っている。
もともとストラップだったそれは、7年前、雪也に貰ったものだ。
……雪也とお揃いのストラップ……。
けれど彼はもう、こんなものはとっくに捨てているだろう。
彼の向かいに座っていた、一目で良家のお嬢様とわかる綺麗な女性。
この7年、彼が自分に全く何の連絡もしてこなかった理由を花澄は一瞬で理解した。
────もう、昔とは違うのだ……。
7年前、雪也を手酷く裏切ってしまった自分。
彼が自分のことを忘れたいと、もう二度と会いたくないと思ったとしても不思議ではない。
自分のことはもう忘れて、新しい彼女と新しい人生を歩みたい、と……
そう思うのも当然だ。
なんだか自分がひどくみじめに思える。
昔の想い出にしがみついているのは、自分だけなのかもしれない……。
花澄は重いため息をつき、グラスの水に再び手を伸ばした。