恋獄 ~ 白き背徳の鎖 ~
20:00。
「………………」
花澄は意を決し、バッグを片手に席を立った。
予約の時間から一時間が経過している。
イブの夜は店にとってもかき入れ時だ。
食事をしないのに、これ以上席を占拠するわけにはいかない。
花澄が立ち上がると、奥のカウンターのところにいた店員が足早に歩み寄ってきた。
「お客様……」
「すみません。予約、キャンセルしてもいいですか?」
「はい、畏まりました」
店員は恭しく一礼して言う。
恐らく直行が来ないことを店員なりに心配していたのだろう。
店員は花澄を店のエントランスの方へと案内する。
入口のカウンターのところに来たところで、花澄は言った。
「……あの、席料はいくらでしょうか?」
「いえ、結構でございます」