恋獄 ~ 白き背徳の鎖 ~



はっきりとしたことはわからないが、相沢環が何の理由もなく日本に戻るはずがない。

戻る理由があるとしたら恐らく、それは彼女に絡んだ何か、もしくは仕事絡みの何かがあるからだろう。

彼が今何の仕事をしているのかまだ詳しく調べたわけではないが、いずれ調べる必要があるかもしれない。


「相沢環、か……」


賢吾は呟き、ビックサイトで見た環の顔を脳裏に思い浮かべた。


相沢環は昔から雪也とは正反対の気質を持っている。

自分が人にどう思われるかということにはまるで関心がなく、自らが望むもののためなら、例え周りを傷つけてでも自らの意思を通そうとする精神的な強さを持っている。

しかも7年前のあの時点で、環は何を犠牲にしてでも彼女と一生を添い遂げる覚悟を固めていた。

『この男は自分のために身を滅ぼすかもしれない』、そんな危険な雰囲気を漂わせた男が身近にいたら、年頃の女であれば心揺れずにはいられない。

環の目的はまだわからないが、あの男の激しさに正面からぶつかろうと思ったら、『いい人』のままでは到底太刀打ちなどできない。


しかし……。



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