恋獄 ~ 白き背徳の鎖 ~
賢吾は腕を組み、窓の外に浮かぶ月を見上げた。
『いい人』であるからこそ、これまで様々な苦労をしてきた雪也。
ずっと昔から自分の代わりに親族の期待の矢面に立ってきた雪也。
……雪也の優しさに自分もまた助けられてきたのだ。
だからこそ、雪也の幼い時からのただ一つの願いを兄として叶えてやりたいと思う。
雪也にとっては過酷な挑戦になるのかもしれない。
しかしもう、猶予はない。
……雪也は自分を恨むかもしれない。
だがこれ以上に、有効と思える方法はない。
花澄を環から守る意味でも、雪也自身の心の変化を促すためにも……。
「……そろそろ、仕込むとするか……」
賢吾はひとつ息をつき、冴え渡る夜空に浮かぶ月をじっと見つめた……。