恋獄 ~ 白き背徳の鎖 ~




「花澄ちゃん、君には我が社の社運が掛かっている! 突然のことで本当に申し訳ないが、ぜひとも我が社のため、ここはひと肌脱いでくれないか!?」

「……で、でも、秘書の仕事は?」

「君がやってた仕事は総務の倉本さんが当面代理でやることになっている。そこは心配しなくていい」

「は、はあ……」

「東洋合繊とのパイプができれば、我が社の将来も安泰だ! 東洋合繊と直に取引できる機会なんて、めったにあるもんじゃない。だから頼む、花澄ちゃん!!」


宮澤はまるで神を拝むかのように手を合わせたまま花澄に頭を下げる。

副社長にここまでされてまさか断るわけにもいかない。

それに森口商事は就職難民になりかけていた花澄を拾い上げてくれた会社だ。

それに東洋合繊なら知らない会社ではない。

これで恩を多少なりとも返せるなら……。


「……わかりました。その話、お受けします」

「ありがとう、花澄ちゃん!!」


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