恋獄 ~ 白き背徳の鎖 ~



<side.雪也>



賢吾に続き、花澄の姿が渡り廊下の向こうへと消えていく。

雪也は怪訝そうに眉を顰め、二人の背を見つめていた。


PMOにちょうどいい人材が見つかった、と社長である父から聞いたのは一昨日の夜。

しかもそれが花澄であると知った時、雪也は驚きのあまり思わず息を飲んだ。

……なぜ突然、花澄に白羽の矢が立ったのか。

父はこの間の展示会で花澄の会社が東洋合繊に接触してきたからだと言ってはいたが、それだけで何の接点もない会社から花澄を引き抜こうと思うだろうか?

しかし父に詳しく聞こうと思っても、父は『忙しいから』とそれ以上話そうとはしなかった。

どうも不可解だ、と雪也はずっと思っていたのだが……。


考えてみたら、あの展示会には賢吾も参加していた。

ひょっとしたら、自分の知らないところで花澄と賢吾は接触していたのだろうか?

父は何も言っていなかったが、花澄をここに呼び寄せるよう手を回したのは賢吾なのだろうか?


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