恋獄 ~ 白き背徳の鎖 ~



「……どうして、兄貴が?」


胸の中に冷たいものが広がっていく。

賢吾は昔から女性にはあまり興味を示さず、花澄に対しても『知り合いの女の子』的な感じで接していた。

それは30間近になった今でも変わらず、結婚する気配はおろか恋人を作る気配もない。

あまりに女っ気がないため、以前、父と雪也は賢吾に男色家ではないかと聞いてみたことがある。

それに対する賢吾の答えはこうだった。


『女性に興味がないってわけじゃないよ。ただ僕の好みは極端すぎて、恐らくこの地球上にはそれに合致する人はいないんじゃないかな。いるとしても密林の奥地か……』


どんな好みだよ、と雪也がすかさず突っ込んだのは言うまでもない。

とにかく賢吾は昔から女性には興味を示さず、そのため賢吾が花澄に近づいても、雪也は特に何とも思わなかった。


しかし。


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