恋獄 ~ 白き背徳の鎖 ~
7年前、自分を好きだったはずの花澄が環に心を持って行かれたように……。
人の心は永遠に変わらないというわけではない。
何かのきっかけで大きく変わることもある。
誰しもがその可能性を秘めており、それは賢吾も例外ではない。
何やら得体の知れない不安が胸に広がる。
……考えすぎなのかもしれない。
賢吾はただ単純に仕事が忙しく、誰かに手伝ってもらいたいと思った時、とっさに思いついたのが展示場で会った花澄だったというだけなのかもしれない。
賢吾は昔からマイペースで人の思いもよらないことをすることがある。
今回のこともあまり深い意味はないのかもしれない。
理性ではそう思うのに、重い何かが心に圧し掛かる。
雪也はゆっくりと踵を返し、役員室に戻るべくエレベーターホールの方へと足を向けた。