恋獄 ~ 白き背徳の鎖 ~



小百合は微笑んで言う。

花澄は驚きのあまり呆然自失となっていたが、やがてはっと我に返った。


「で、でも……っ! 今の私の家とでは、その、釣り合いが……っ」


と、花澄が言うと。

小百合は何とも言えない表情を浮かべ、苦笑した。

花澄から視線を逸らし、膝の上でそっと指を組む。


「……実はね。この話は、賢吾が言いだしたことなの」

「……え?」

「見ての通り、賢吾は昔から女っ気が全くないでしょう? でも花澄ちゃんとなら結婚を考えてみるって言い出してね……」


小百合の言葉に花澄は目を見開いた。

……つまり。

多少家柄が釣り合わなくても、これまで女性に見向きもしなかった長男がその気になったのなら、そこは目を瞑るということらしい。


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