恋獄 ~ 白き背徳の鎖 ~



「もちろん私も花澄ちゃんを気に入ってるし、花澄ちゃんが賢吾のお嫁さんになってくれたらこんなに嬉しいことはないわ」

「……で、でも」

「それに縁組をすればうちと花澄ちゃんの家は親戚ということになるわ。そうすれば花澄ちゃんの家の工房を堂々と支援することもできるしね?」


花澄は息を飲んだ。

確かに賢吾と結婚すれば月杜家がバックにつくことになる。

それは工房にとってはとても大きい。

けれど……。


花澄は服の下に身に着けた、雪也から貰ったペンダントに無意識のうちに服の上から指を這わせた。

……自分に想いを寄せてくれている雪也。

彼を想うと切ない痛みが胸をよぎる。

自分が賢吾と結婚したら、間違いなく彼は傷つくだろう。


花澄の思いを察したのか、小百合はひとつ息をつきメイドが持ってきたコーヒーカップに手を伸ばした。

上品な仕草でコーヒーを一口飲み、長い睫毛を伏せて続ける。


< 158 / 334 >

この作品をシェア

pagetop