恋獄 ~ 白き背徳の鎖 ~



「……もちろん雪也の気持ちは私も知っているわ。雪也がこのことを知ったら傷つくでしょうね」

「…………」

「でも雪也が花澄ちゃんに向けている気持ちと、花澄ちゃんが雪也に向けている気持ちは違う。花澄ちゃんの心にはまだ環君がいる。違うかしら?」


小百合の言葉に花澄は思わず息を飲んだ。

……小百合の言っていることは、正しい。

雪也が自分を想ってくれるように自分も雪也を想っているのなら、縁談などやめてとなりふり構わず雪也に迫るだろう。

そうしないのは、自分の心にまだ環がいるせいなのか……。

花澄は軽く唇を噛み、睫毛を伏せた。


7年前に環が持って行ってしまった、自分の心の半分。

ぽっかりと心に空いた空洞は誰と付き合っても埋まることはなかった。

その空洞は今も花澄の心に空いている。


小百合は俯いた花澄を見つめながら、その綺麗な形の唇を開く。



< 159 / 334 >

この作品をシェア

pagetop