恋獄 ~ 白き背徳の鎖 ~




花澄はぐっと唇を噛みしめ、バッグの取っ手を握りしめた。

意を決し、そのまま植え込みの裏に回って二人の前に立つ。

二人は突然の花澄の登場に驚き、目を丸くした。

……まるで幽霊でも見たかのようなその眼つき。

花澄は二人を見据えながら、震える声で言った。


「……広瀬さん」

「花澄……」


直行はぽかんと花澄を凝視する。

直行に抱きついていた女の子も、唖然と花澄を見つめている。

花澄は軽く息を整え──── 一息に言った。



「……別れましょう。さようなら、広瀬さん」


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