恋獄 ~ 白き背徳の鎖 ~



小百合は言葉を止め、視線を上げた。

正面から花澄を縋るように見る。


「お願いよ、花澄ちゃん。……もう、雪也を諦めさせてやってほしいの。あなたが結婚しないと、雪也はいつまでもあなたに囚われ続けるわ」

「……っ!」

「雪也は傷つくかもしれない。でも長い目で見れば、それが雪也のためになるのよ」


小百合は必死な声で言い募る。

花澄は体を硬直させ、小百合を見つめていた。


7年前、雪也を傷つけた自分。

しかし7年経った今も雪也は自分に変わらぬ気持ちを持ち続けている。

それがどれだけ辛く、切ないことなのか……。


『あなたが結婚しないと、雪也はいつまでもあなたに囚われ続けるわ』


小百合の言葉が何度も胸にこだまする。

もしどんな障害があっても雪也と添い遂げたいという気持ちがあれば、自分も何を置いてでも雪也の傍に居ようとするだろう。

けれど今の自分には、そこまでの覚悟がない……。

であれば小百合の言うとおり、きっちりとケリをつけた方が雪也のためになるのかもしれない。


雪也の、ために……。



< 162 / 334 >

この作品をシェア

pagetop