恋獄 ~ 白き背徳の鎖 ~



「…………っ」


花澄はぐっと手を拳に握りしめた。

理性ではそうするのがベストなのだと分かっている。

けれど心の奥で、雪也の気持ちを嬉しいと思う自分がいる。

雪也と一緒にいると心の奥に埋めた初恋が甘く疼く。

……環にも感じたことのない、純粋なときめき。

雪也にしか感じることのない、自分の心の一番綺麗なところから溢れ出る、温かいときめき……。


俯いた花澄を小百合はしばし気遣わしげに見つめた後、隣に座った賢吾に視線を流した。


「というわけで、賢吾とのこと、一度考えてみてくれないかしら? ……では私は席を外すわね。二人でじっくり話してみて?」

「ああ」


小百合は花澄に優雅に笑いかけ、静かにソファーから腰を上げた。

そのまま静かに応接室を出て行く。

二人きりになったあと、花澄は賢吾に気になっていたことを聞いてみた。


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