恋獄 ~ 白き背徳の鎖 ~



「……あの、賢吾さん……」

「ん?」

「どうしてですか。……なぜ、私を?」


と、花澄が聞くと。

賢吾は目を数回瞬かせ、いつもの声音で言った。


「特にそこまで深い理由があるわけじゃないんだけどね。君のことは昔から知っているし、昔は一応婚約してたし」

「でも……っ」

「ま、しいていうなら君が雪也の想い人だからかな?」


賢吾は何でもないことのように言う。

花澄は賢吾の言葉に凍りついた。

……小百合にも賢吾にも、自分は雪也の気持ちを弄んでいるように見えたのだろうか?

確かに家族である二人からすればそう見えてもおかしくはない。

青ざめた花澄に、賢吾は慌てて胸の前で手を振った。



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