恋獄 ~ 白き背徳の鎖 ~
「僕は君をそういう対象として見たことはないし、結婚したとしても君と関係するつもりはないから」
「……は、はぁ?」
「僕の嗜好にマッチする人はたぶん地球上にはいないだろうから、僕は中学の頃からそれは諦めてる。だから君も環を無理やり忘れようとする必要はないよ」
地球上にいないって……。
花澄は唖然とした。
やはり賢吾はどこか常人とは違う。
驚く花澄に、賢吾は少し笑って言う。
「ま、とはいっても人と人とのことなんでどうなるかわからないけどね。結婚の形は人それぞれだし、結婚してから始まる関係ってのもあるかもしれないし」
「…………」
「ま、僕はお互いに割といい条件なんじゃないかと思ってる。……そうだな、とりあえず一週間考えてみて? 今度の土曜、またここで君の意見を聞かせてほしい」
賢吾は眼鏡の奥の目を弓のように細め、にこりと笑う。
……雪也に少しだけ似ている、その笑顔。
花澄は戸惑いながら、軽く頷いた。