恋獄 ~ 白き背徳の鎖 ~
2.ひとつの決意
その日の夜。
花澄は湯船に浸かりながら、今日のことを思い出していた。
……まさか賢吾との縁談が出るとは思わなかった。
しかし考えてみれば賢吾も来年で30になる。
月杜家の長男という生粋の御曹司であるにも関わらず、まるで女に興味を示さない賢吾に、小百合はずっと危機感を抱いていたのだろう。
花澄にしてみても、この話は悪い話ではない。
むしろこれ以上ないと言うぐらい、いい話だ。
ただ……。
花澄は首元に付けたままの銀のペンダントを手に取り、じっと見つめた。
……雪也に貰ったあの日から、ずっと付けたままのペンダント。
これを身に付けていると雪也の温かさに包まれているような気がする。
心が弱っているせいなのだろうか、まるで温もりに縋るように、どうしてもこのペンダントを外すことができない。
……そう、外せないのは、心が弱っているせいなのだ……。
深く考えようとすると得体のしれぬ恐怖が胸を蔽う。
これ以上考えてはいけない、と理性が感情を引き留める。
花澄は湯煙が立ち込める天井を見上げ、切ないため息をついた。