恋獄 ~ 白き背徳の鎖 ~
翌週の木曜。
花澄は渋谷の駅前で知奈と待ち合わせをしていた。
19時を過ぎ、ハチ公口にはバイト帰りの大学生や仕事を終えたサラリーマンがひっきりなしに行き交っている。
「お待たせ、花澄」
やがて雑踏の中から白のブラウスに紺のスカート姿の知奈が姿を現した。
二人はそのままみずほ銀行の前を抜け、道玄坂の方へと歩いて行った。
────10分後。
「……は、縁談?」
知奈はビールジョッキを片手に花澄の顔をまじまじと覗き込んだ。
二人がいつも行きつけにしているこの和風居酒屋は、今日は早い時間のせいかまだ卓の半分ほどしか埋まっていない。
花澄は運ばれてきたツナサラダを卓の真ん中に置き、取り皿を手に取った。
手早く二人分をそれぞれ皿に盛りつけ、片方を知奈の前に置く。
「お、ありがと。……って花澄、相手は誰よ?」
「月杜君のお兄さんの月杜賢吾さん」
「はあっ!?」