恋獄 ~ 白き背徳の鎖 ~



もちろん恋愛結婚に憧れる気持ちもあるが、7年前に環に感じていたような、灼けるような情熱を誰かに抱けるようになるとは思えない。

雪也に再会し正直揺らいではいるが、雪也にはこれから歩むべき道がある。

自分がその邪魔をするわけにはいかない。


「いいんじゃないの? まずは受けてみたら? 聞いた感じ、悪い話じゃないよ」

「……そうだね」

「何事もやってみなけりゃわからないってね。何か進展があったら逐一報告すること! いいわね?」


知奈は言い、大きな口でツナサラダを頬張った。

……確かに、何事もやってみなければわからない……。


今日、知奈に話を聞いてもらったのは……

固まりかけた決意の、最後の一押しをしてもらいたかったからかもしれない。

この一週間、花澄は賢吾と共に仕事をし、賢吾の言葉に嘘はないことをなんとなく感じ取っていた。

賢吾はあくまで互いの利益のみを考えた政略結婚をしようとしている。

恐らく賢吾と結婚しても二人の関係は変わらないだろう。

それは花澄にしてみれば、願ったり叶ったりだ。

相手を好きにならなければいけないと気負う必要がない分、リラックスして日々の生活を送ることができる。


それに……。

雪也の将来のためにも、もうここではっきりとさせた方がいいのだろう。


< 173 / 334 >

この作品をシェア

pagetop