恋獄 ~ 白き背徳の鎖 ~
『お願いよ、花澄ちゃん。……もう、雪也を諦めさせてやってほしいの。あなたが結婚しないと、雪也はいつまでもあなたに囚われ続けるわ』
花澄の心に楔のように打ち込まれた、小百合の言葉。
……賢吾を選ぶと言うことは、雪也の想いを切り捨てるということだ。
あれだけ愛してくれた人をさらに傷つけると思うと、花澄の胸に軋むような痛みが広がる。
でも態度を曖昧にすればするほど、雪也の苦しみをさらに長引かせることになる。
花澄は脇に置いてあった鞄に視線を投げた。
鞄のサイドポケットに入っている部屋の鍵には、昔雪也に貰った小さな根付のぬいぐるみがついている。
7年経ち薄汚れているのに、花澄はそれをどうしても捨てることができなかった。
でも……もう……。
心の中でひとつの決意が固まっていく。
花澄は胸の痛みから目をそらすように鍵から目をそらし、梅酒のグラスをぐいと傾けた……。