恋獄 ~ 白き背徳の鎖 ~



もう自分たちの立場は、天と地ほどに違うものになってしまった。

────7年前。

花澄の家は箱根で藍染めの工房を営んでいたのだが、資金繰りの悪化で苦境に陥り、そこから家は没落の一途を辿った。

それまで花澄と父は北鎌倉にあった屋敷に住んでいたのだが、資金難から屋敷は売りに出され、大学も一年の時に中退せざるを得なくなった。

工房だけは何とか存続したが、今も土日になると花澄は手伝いのため工房がある箱根に通っている。


花澄は今、新宿にある小さな商社『森口商事』に勤めながら、八王子の家賃五万のアパートで細々と一人暮らしをしている。

『お嬢様』だった昔とは全く違う、苦しい生活。

……しかしこの苦境を招いたのは、自分だ。


7年前の、あの事件……。

雪也を傷つけ、家族を傷つけ、そして……

『彼』を失った、あの事件。

あの事件の傷は今も、生々しく胸に残っている。


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