恋獄 ~ 白き背徳の鎖 ~
その日の夜。
ベッドで物思いに耽っていた花澄のもとに、電話が掛かってきた。
携帯を広げ、相手を確認する。
……父だ。
「もしもし」
『あぁ、花澄か。……今日、賢吾君がうちの工房に来たぞ。とりあえず証人欄にサインしておいたが……』
父は言い淀んだように語尾を低くする。
父にこの話をしたのはこの間の土曜の夜だ。
父にしてみればあまりに唐突で驚くのも無理はない。
「ありがと、お父さん。突然だったから驚いたでしょ?」
『まあな……。だが、いいのか? お前は……』
「昔のことはもう、昔のことだから。……私ももう25だし、いい話があるうちに身を固めておいた方がいいかなと思って」
『まあ、賢吾君はちょっと変わっているがいい青年だからな。お前を不幸にするということはないだろう』
「…………」