恋獄 ~ 白き背徳の鎖 ~



14:00。

賢吾のマンションに到着した花澄は、入口でインターホンを鳴らした。

ザザっというかすかな機械音の後、賢吾の声がスピーカーの向こうから響く。


『あぁ、花澄ちゃん。奥のエレベーターから21階に上がってもらっていいかな?』

「あ、はい」

『エレベーターを降りたら右に出て、突き当りが僕の部屋だから』

「わかりました」


花澄は田中さんに手伝ってもらい、段ボールを持ってエレベーターに乗った。

田中さんはどこか懐かしそうな顔でエレベータの中を見回す。


「……どうかしましたか?」

「あぁ、いえ。……以前、賢吾様の引っ越しの時にもここに来たことがありまして。その後、雪也様の引越しの際にもお手伝いをさせて頂きました」

「そうだったんですか」

「雪也様の部屋は隣のB棟ですので賢吾様の部屋とは少し間取りは違いますが、どちらも広くて明るい、とても良いお部屋でございますよ」

「……え?」


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