恋獄 ~ 白き背徳の鎖 ~



花澄は思わず目を丸くした。

……雪也が、隣の棟?

花澄は再会してから、雪也がどこに住んでいるのか聞いたことはなかった。

高校の時は雪也は寮に住み、たまに花澄の祖母の計らいで週末に花澄の家に泊まりに来ていたことはあるが……。

まさか、隣の棟に住んでいるとは……。


「さ、着きましたよ」


ポーンという音と共にエレベーターのドアが開く。

ドアを押さえてくれた田中さんにお礼を言い、花澄は右手の奥へと足を向けた。

突き当りの部屋の前で足を止め、ベルを鳴らす。


やがて扉の向こうで何やらバタバタ音がした後、ガチャッとドアが開いた。


「いらっしゃい~」


スーツにビジネスコートを羽織った賢吾が姿を現した。

そういえば、今日は夕方から出張のため大阪に向かうと言っていた気がする。

おじゃましますと花澄は言い、抱えていた段ボールを玄関におろして顔を上げた。

その瞬間。


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