恋獄 ~ 白き背徳の鎖 ~
花澄は脱力し辺りを見回した。
何となく予想してはいたが、この有様を見る限り賢吾はどうやら生活能力はゼロらしい。
よくこの状態で毎日普通に出勤しているものだと、ある意味感心してしまう。
「……賢吾さん。部屋の中って、私が片づけてもいいんですか?」
「リビングとか脱衣所は適当にやっちゃってかまわないよ。というかやってくれると嬉しいな」
賢吾は呑気な声で言う。
花澄と一緒に入ってきた田中さんも驚いた様子で部屋の中を見回していたが、すぐに我に返って二人に向かって深々と一礼した。
「では、私はこれで失礼いたします」
「ありがとうございました、田中さん」
「ありがとね~」
ひらひらと手を振る賢吾と頬を引き攣らせた花澄に見送られ、田中さんは玄関を後にした。
……二人きりになった後。
花澄は賢吾に手招きされ、リビングへと入った。
賢吾に言われるままダイニングテーブルの椅子に腰かける。