恋獄 ~ 白き背徳の鎖 ~
<side.賢吾>
16:00。
賢吾はタクシーで目黒の実家に向かいながら、先ほど花澄に書いてもらった婚姻届を鞄の中から出し、まじまじと見た。
その『夫』欄は、空白のままだ。
「思ったよりスムーズに運んだな……」
賢吾はスーツの胸ポケットからペンを取り出し、二枚ある婚姻届のうち、一枚に自分の名前を記載した。
そして、もう一枚は……。
「……タイムリミットは一か月、か」
賢吾の唇に楽しげな笑みが浮かぶ。
賢吾は婚姻届をしばし眺めた後、鞄の中に戻した。
このどちらを出すことになるのか、それは一か月後のお楽しみだ。
あとは……。