恋獄 ~ 白き背徳の鎖 ~
────藤堂花澄。25歳。
7年前に高校を出た後、新宿にある小さな商社の総務部で働いている。
少し癖のある長い黒髪に、小鹿のような華奢な躰。大和撫子を思わせる情感的な焦茶の瞳。
安物の服を身に着けているが、一見そうとは見えないような凛とした気品を漂わせている。
ロビーに入った花澄は辺りを見回し、直行の姿を探した。
……直行と知り合ったのは、一年ほど前。
花澄が勤めている、新宿にある小さな商社に直行が水道配管の確認に来たのがきっかけだった。
笹塚の甲州街道沿いにある工務店に勤めている直行は、花澄と同じく高卒だが配管工としての腕は確かで、花澄の会社には水漏れの修理に度々来ていた。
やがて花澄は直行から食事の誘いを受けるようになり、二人で何度か食事をするうちにいつのまにか付き合う形となっていた。
しかし二人はまだ体の関係にはなっておらず、これまでプラトニックな『お付き合い』を続けてきた。
「…………」