恋獄 ~ 白き背徳の鎖 ~

3.過去と現在




週末の土曜。

花澄は友人に誘われ、渋谷の繁華街にある居酒屋に入った。

和風居酒屋の看板が出ているその店はJR渋谷駅からタワーレコードに行く途中にあり、さほど広くはないがいつも客で賑わっている。


「……へぇ、なるほどね。イブの夜に別れた、と」


梅酒のグラスを傾ける花澄の前で、黒いパンツスーツに白いシャツを身につけた友人が串揚げを手に取る。

ソースを塗り付け、ぱくりと大きな口で串揚げを頬張る、その女性は……。


西脇知奈。25歳。

花澄の高校時代の友人で、今はコピーライターの仕事をしている。

知奈は高校の頃から文才に優れており、大学卒業と同時に広告代理店に入社し、ライターの仕事を始めた。

今は品川にある小さな出版社に勤めているが、今度の春までに転職する予定らしい。


「せっかくまともそうな男を捕まえたかと思ったら、二股かけられて、しかもよりによってイブの夜に発覚。……さすがの私も何とも言えないわ」

「……うっ……」

「あたしもフツーじゃない恋愛経験をいくつかしてるけど、あんたの恋愛遍歴もフツーじゃないわよね。ま、最初がアレだから仕方ないか?」


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