恋獄 ~ 白き背徳の鎖 ~
賢吾は鞄の中からもう一枚の書類を取り出した。
『身元調査書』と書かれたそれは、相沢環について調べさせたものだ。
そして調査結果は、だいたい賢吾の予想通りだった。
「日本国籍を捨てた、か。……であれば彼だけでは国内で婚姻届を出すことはできない。そこは大丈夫そうだな……」
いくら花澄と一緒に住んでいても、戸籍を先に動かされてしまってはどうする術もない。
賢吾は数日前の花澄の話を思い出した。
来週予定された、『港南機業』の子会社の役員との会食……。
賢吾は身元調査書に視線を走らせた。
身元調査書の中ほどに、相沢環の現在の名前と現職についての記載がある。
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調査対象人名 : 相沢環(25)
[調査結果]
7年前に香港に渡った後、日本国籍を捨て香港の戸籍を取得。
戸籍名は『林環』、字名は『暁生』。
3年前に香港大学経済学部を卒業、父親が社長を務める『港南機業有限公司』に入社。
現在は董事(取締役)の役職に就く。
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