恋獄 ~ 白き背徳の鎖 ~



どうして……

どうして花澄は、環と付き合おうと思ったのだろうか。

少なくともあの夏までは花澄は自分に想いを寄せていた。

環のことはそういう対象としては見ていなかったはずだ。

なのに、なぜ……。


「花澄……」


この7年間、いくら考えてもわからなかった。


出会いの時からそうだったように、彼女は醜い自分であっても受け入れてくれた。

そして自分も、彼女のことを誰よりも理解していた自信がある。

彼女は環のことを自分ほど理解していたわけではない。

けれど彼女は環と付き合うことを選んだ。

受け入れ理解してくれることと、愛することは別なのだ、と……

それを知った時には全てが遅かった。

彼女の心は環に奪われ、彼女の目には環しか映らなくなった。


雪也は玄関に入り傘を閉じた。

今日実家に来たのは、両親に縁談の件で話があると呼ばれたからだ。

しかし雪也は川波重工の娘との縁談については既に断るよう両親に伝えている。

となると別の縁談だろうか。


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