恋獄 ~ 白き背徳の鎖 ~



雪也の気配に気づいたのか、二人の会話が止まった。

二人はドアのところに立つ雪也を見るなり、はっと息を飲む。


……やがて。

小百合は姿勢を正し、雪也の方へと向き直った。

真剣な鋭い目で雪也を見つめる。


「……おいでなさい、雪也。あなたに話しておかなければならないことがあります」


その声を聞いた瞬間、雪也の心の奥底から冷たいものが突き上げてきた。

小百合もそうだが、なぜここに賢吾がいるのか。

そして、今の話の内容は……。


重い足取りで一歩、また一歩と近づいた雪也を小百合の黒い目がじっと見据える。

そして母の口から出た言葉に────


雪也の心は奈落の底に突き落とされた。



「……来月、賢吾と花澄ちゃんが結婚することになったわ。入籍の日に両家で食事会を開くから、あなたもそのつもりでいなさい」


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