恋獄 ~ 白き背徳の鎖 ~

6.大事なこと




18:00。


花澄は服を畳んでいた手を止め、ふと窓の外を見た。

夕方から降り出した雨が、窓に当たりポツポツと音を立てる。

────昼でもなく夜でもない、黄昏時。

ガランとした部屋に一人でいると、なんとなく寂しい気持ちになる。


今日は一人だけれど……

火曜からは毎晩、賢吾がこのマンションにいるのだ。

そう考えるとなんだか不思議な気分になる。


一人暮らしをしていた花澄にとっては、夜、誰かが傍にいてくれるというのは嬉しい。

たとえ政略結婚ではあっても、自分はもう一人ではないのだ。

なのに……。


胸にこみ上げる、この凍るような寒さは、なんなのだろう……。


花澄は前のアパートの鍵から取り外した根付のぬいぐるみをジーンズのポケットから出し、じっと見つめた。

昔、雪也から貰ったお揃いのストラップ……。

なぜかこれを見つめていると、胸の寒さが和らぐような気がする。

外した時に捨てようと思ったのに、……結局まだ、花澄のポケットの中に鎮座している。


自分はまだ、心が弱っているのだろうか……。

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