恋獄 ~ 白き背徳の鎖 ~
彼は別れの際に、自分の心の半分をするりと持ち去っていった。
心にぽっかりと空いた穴は、7年経った今でも埋まることはない。
俯いた花澄に、知奈はグラスを軽く傾け、続ける。
「ま、相沢君ならどこ行っても生きて行けるだろうし。行き倒れてる可能性はゼロだとは思うけど……」
「…………」
「そういえば、聞いてよ! この間のお見合いパーティで会った男、とんでもないヤツだったのよ!」
突然声を荒げた知奈に、花澄はびくっと顔を上げた。
確か半月ほど前、『イケメンをゲットしたのよ~』と知奈は言っていたような気がするのだが……。
花澄は恐る恐る聞いてみた。
「えっと……なんだっけ? リョウタさん、だっけ?」
「そう、そいつ! 気持ち悪すぎてもう名前すら思い出したくないわ!」
「は、はあ……。で、何があったの?」
と、花澄が聞くと。
知奈はぐいとグラスを傾け、とん!とテーブルに置いた。