恋獄 ~ 白き背徳の鎖 ~



花澄は自分を淫乱だと思ったことはない。

けれど今、雪也の前にいる自分は淫乱そのものだ。

こんな自分を、雪也はどう思っただろうか。

こんな女だとは思わなかったと、呆れたのではないか……。


と思わず雪也から目を逸らした、その時。


「……やはり君は、俺の心を見ようとしないな。またそうやって、目を逸らす」


甘く熱い、テノールの声。

耳を溶かしていく、その声……。


ふと視線を上げると、雪也の熱情を帯びた瞳とぶつかった。

花澄の心を奪い去ろうとするような、強引な瞳……。


「どんな君でも、俺にとって君は君だ。昔から変わらない」

「雪くん……」

「ましてや俺の手でこんなに乱れるなら、……もう手放せるはずがない……」


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