恋獄 ~ 白き背徳の鎖 ~
────10:00。
資料の大枠ができたところで、花澄はキーボードを打つ手を止めた。
「……あいたた……」
小声で呻きながら、軽く腰をさする。
……まるで集中できない。
朝だというのに頭の中は仕事ではなく、全く別のことで占められている。
あれから。
二人は雪也のマンションに籠り、今朝まで一緒にいた。
二人で朝食を摂り、スーツに着替えて、一緒に部屋を出て……。
「…………」
花澄はノートパソコンの画面を睨むように見つめながら、軽く唇をかんだ。
自分が何をしてしまったのか、それは自分自身がよくわかっている。
賢吾とは『婚約証明書』を交わしている。
つまり花澄は既に貞操を守る義務があるのだ。
雪也に抱かれたことは賢吾に対する明確な裏切りだ。
こんなことをしてしまった自分はもう、賢吾にはふさわしくない。
雪也とどうなるかは別にしても、賢吾とは別れなければならない……。