恋獄 ~ 白き背徳の鎖 ~



────10:00。

資料の大枠ができたところで、花澄はキーボードを打つ手を止めた。


「……あいたた……」


小声で呻きながら、軽く腰をさする。

……まるで集中できない。

朝だというのに頭の中は仕事ではなく、全く別のことで占められている。


あれから。

二人は雪也のマンションに籠り、今朝まで一緒にいた。

二人で朝食を摂り、スーツに着替えて、一緒に部屋を出て……。


「…………」


花澄はノートパソコンの画面を睨むように見つめながら、軽く唇をかんだ。

自分が何をしてしまったのか、それは自分自身がよくわかっている。


賢吾とは『婚約証明書』を交わしている。

つまり花澄は既に貞操を守る義務があるのだ。

雪也に抱かれたことは賢吾に対する明確な裏切りだ。


こんなことをしてしまった自分はもう、賢吾にはふさわしくない。

雪也とどうなるかは別にしても、賢吾とは別れなければならない……。

< 244 / 334 >

この作品をシェア

pagetop