恋獄 ~ 白き背徳の鎖 ~



「…………っ」


花澄はぐっとマウスを握りしめた。

脳裏から雪也の眼差しが離れない。

あの瞳も、声も、指も、肌も……。

体中に刻み込まれた情熱の証が、スーツの下でじわりと熱を孕む。


雪也は恐らく、もう自分を離すつもりはないだろう。

例え逃げ出しても、雪也相手に逃げ切れるとは到底思えない。

しかし雪也との関係が続いた状態で賢吾と結婚してしまったら、二人の関係は『不倫』になってしまう。

しかも相手は夫の弟という最悪な状況だ。

雪也の将来のためにも、そんなことは絶対に許されない。


こうなったら早いうちに賢吾にちゃんと言った方がいいだろう。

裏切ったことを詫び、婚約を解消したい、と……。


「…………」


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