恋獄 ~ 白き背徳の鎖 ~
『ごめん、出張が長引きそうなんだ。
で、悪いんだけど、ちょっと急いでやらなきゃならない事務仕事が溜まっててね。
今日の午後から、大阪に来てもらってもいいかな?』
「……え……」
花澄は目を見開いた。
大阪に来い、とは……。
しかも今日の午後からって、ずいぶんと急な話だ。
しかし今、花澄の上司は賢吾である。
これといった理由もないのに従わないわけにはいかない。
それにここにいたら、自分はまた賢吾を裏切ってしまうかもしれない。
ダメだと分かっていても、雪也に求められたら拒み切れる自信がない……。
それなら出張で無理やりにでも離れた方がいいだろう。
花澄はスケジュール画面を落とし、はぁと重いため息をついた。