恋獄 ~ 白き背徳の鎖 ~
兄が自分を信頼しているのは明白だ。
なのに兄の出張を心の隅で喜ぶ自分がいる。
弟であればこういう場合、一緒に暮らし始めたばかりなのに会えない二人を心配するのが正しいのだろう。
しかし自分は心配するどころか、これで明日まで花澄を独占できるととっさに思ってしまった。
『いい人』どころか、かなり最悪な人間の部類に入るであろう、今の自分。
自分の醜さが、卑怯さが自分でも嫌になる。
だとしても、もう……。
――――止められない。
花澄の体を知ってしまった今、もう離れることなど考えられない。
まるで貪るかのように、何度抱いても欲望は尽きることがない。
花澄の体に触れるだけで脳髄が溶かされていくような、爛れた甘い沼に体ごと引きずり込まれるような、あの蠱惑的な感覚。
花澄も同じように感じているようだが、この感覚は普通ではないと雪也は直感していた。
高校の時に花澄と付き合い、こういう関係になっていたら、自分も環と同じように駆け落ちを考えたかもしれない。
「……環、か……」