恋獄 ~ 白き背徳の鎖 ~
2.変わりゆく心
その日の午後。
15:00。
花澄は大阪駅近くのビジネスホテルのロビーにあるカフェで、賢吾と向かい合っていた。
賢吾は相変わらずの調子で花澄に指示を出す。
「悪いね~、こんなとこまで来てもらって。で、まず君に作ってもらいたいものなんだけどね、この契約書と見積書を……」
賢吾は手にしていたビジネスバッグから書類を出し、テーブル越しに花澄に手渡す。
……そして、20分後。
一通りの説明を終えた後、賢吾はコーヒーカップを傾けてはぁと息をついた。
しばしの沈黙の後、カップをソーサーに置いて思い出したようにスーツのポケットを探る。
「そういえば。これ、うちの母から預かって来たんだけど」
と言いながら、賢吾はポケットから何かを取り出した。
シルバーなのかプラチナなのか、小さなサファイアがついた銀色のそれは……。