恋獄 ~ 白き背徳の鎖 ~
「……指輪、ですか?」
「なんでもうちの母が父と婚約した時に貰ったものらしくてね。本当は娘がいれば渡したかったんだけど、いないから代わりに受け取ってもらいたいって」
「え……っ」
「気に入らなければ捨ててもいいって言ってたけど。とりあえず渡しておいていいかな?」
賢吾は花澄の手に指輪を押し付けるように渡す。
……まさかそんな思い出の品を捨てるわけにもいかない。
花澄は指輪を眺めつ眇めつしたあと、恐る恐る右手の中指に通してみた。
少し緩いが、落ちるほどではない。
しかし……
この指輪に込められた小百合の気持ちを思うと、胸が痛む。
……これは、戒めだ。
力なく目を伏せた花澄をしばし眺めた後、賢吾は再び口を開いた。