恋獄 ~ 白き背徳の鎖 ~
花澄が兄を愛していると言うのなら、それで幸せになれるというのなら、まだ諦めもついた。
しかし二人の間に愛はないと知った今、諦めるなどという選択肢はとうに雪也の中から消滅している。
花澄を愛していない兄より、花澄を愛している自分の方が彼女を幸せにできるのは明白だ。
そう思い込もうとする自分がいる。
雪也はベッドのサイドテーブルに目をやった。
サイドテーブルの中には指輪の入った小箱がある。
先週、二人の婚約を知る前、雪也は今週末のホワイトデーに花澄に渡そうと指輪を手配した。
賢吾とのことは気がかりだったが、それを払拭するためにも花澄にはっきりと自分の気持ちを伝え、彼女との関係を一歩進めたかった。
それが、今は……。
この先、自分たちがどうなるのか……。
花澄が困惑し、悩んでいることは雪也ももちろんわかっている。
けれどもう、自分も引くわけにはいかない。
例え周りの人間を苦しめることになっても……。
二人を思うと胸が引き裂かれそうに痛む。
雪也は目元を片手で押さえ、重苦しいため息をついた。