恋獄 ~ 白き背徳の鎖 ~
翌日。
9:30。
東洋合繊の滋賀工場は大津市の東部、湖西線の駅からタクシーで10分ほど走ったところにある。
琵琶湖に面した滋賀工場は東洋合繊の中では中規模の工場で、主に不織布や樹脂系のフィルムの生産を行っている。
花澄は名刺とICカードを提示して守衛の前を通り、中へと入った。
敷地内に入ると正面に工場が、左手に管理棟と来客用の駐車場があり、工場の奥に従業員の駐車場らしきスペースが見える。
確か、雪也は先に工場の中にいると先ほどメールが入っていたが……。
花澄は工場の玄関から入り、辺りを見回した。
滑り止め加工が施された緑色の床の上に、製造ラインだろうか、ベルトコンベアやそれに連結された製造機械、そして原材料のチップなどが入っているタンクが繋がっている。
壁には工場用の大きなエアコンが何台も備え付けられ、その横には小さなパーツが入った移動式のラックが並んでいる。
正面には大きな扉の出入り口があり、フォークリフトが行き交っているところを見るとどうやら部品や製品の搬入口になっているらしい。
花澄は玄関の脇にある小さな現場事務所の中を覗いてみた。
が、雪也の姿はない。
やがて花澄の姿に気付いた作業服の男性が窓越しに顔を出した。