恋獄 ~ 白き背徳の鎖 ~



「……お疲れ、花澄。昼飯に行こう」


雪也が浜中課長と共にドアから顔を覗かせた。

……そういえば、もうお昼だ。

他の社員達もお昼に出たらしく、いつのまにか姿が見えなくなっている。

花澄は慌てて立ち上がった。

バッグに携帯を放り込み、急いで立ち上がる。

花澄が事務室から出ると、雪也はスーツのポケットから車のキーを取り出した。

どうやら工場の社用車の鍵のようだ。


「この近くに美味しい郷土料理の店があるらしいんだ。ここまではめったに来ないし、せっかくだから行ってみようか?」

「はい」


と頷いた花澄の前で、浜中課長は申し訳なさそうに言う。


「すみません、専務。自分はペーパーでして……」

「いいんですよ。俺、運転好きですから」

「あっ、携帯を上に忘れてしまいました。すみませんが先に駐車場に行っててください」


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